ストーリー

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いつの時間の、どこから、どこへ向かう車中なのか―。

30代半ばの2人の男と1人の女が車に乗っている。空が白みはじめる明け方の高速道路。3人の表情は、少しの不安を映しながらも、それぞれが帰らなければならない場所から切り離されたように、どこか自由げだ。

3人の名前は則夫-のりお(柳沢茂樹)、大和-やまと(古屋隆太)、慈-よし(長尾奈奈)。彼らは東京の西、田無で幼少期をともに過ごした幼馴染みだ。1989年にできた新しい電波塔、田無タワーが空に映す光の色は、翌日の天気を占う。それを見上げながら、森山周-もりやままこと-(寺十吾)と一緒に過ごす夕暮れは彼らの至福の時間だった。大和は森山に尋ねる。「よだかがなった星って、ここから見えるんですか?」3人は、日蓮系の信仰宗教「種子の会」の二世、三世信者だった。森山は「種子の会」の青年幹部であり、彼らの父、兄のような存在だった。

「一緒に探そうか」と森山は答える。

それから25年の月日が流れ、則夫は34歳、大和は36歳となり、変わらず「種子の会」の信者として過ごしていた。日本には数年前の3.11の日付から、たくさんの回復しきれない問題が横たわっていた。しかし則夫達が生活する東京では次第に過ぎ去ったことのようになり、震災直前につかの間―政権を失った一大与党は息を吹き返し、独裁の傾向を強めつつあった。「種子の会」を母体とする種子党は、その与党に振り払われぬよう、傍に立ち続けていた。

「2070年には日本の人口が半分になろうとしている。その中で、種子の会の信者は何人残っているのか」。

種子党幹部は、若手の西村武則(岡村まきすけ)をこの夏の参議院選挙の候補に送り出し、組織活性化を図ろうとする。大和らに“種子の会離れ”した森山派の信者を支持層に呼び戻すことを命じる。森山は、種子の会の青年部のカリスマ的な存在になり、国会議員として活躍した。しかし10年前の自衛隊派兵を契機に、政界から、そして則夫たちの前からも失踪していた…。