上映日誌

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2018年2月17日(土)

17日(土)は、木村監督のデビュー作でもあり、24日(土)から公開される『息衝く』の重要な布石となる『へばの』のリバイバル上映が行われ、上映後にキャスト、監督による舞台あいさつがありました。

以下、その模様をお届けします。

ご登壇者は、西山真来さん(紀美役)、吉岡睦雄さん(治役)、木村文洋監督の3人。

トークは、木村監督の挨拶からスタートしました。

「私は青森県弘前市出身なのですが、26歳(2006年)の時に六ケ所村に核燃料の再処理工場を観に行きました。子供の頃にそういったものが誘致されていたのは知っていたのですが、その年齢で初めて観まして、巨大なものが引き返すことなく、既に完成されていることに絶句したのです。 そして六ケ所村の施設の本稼動を開始しようとする一方で、数名の被曝労働者が出ていることについてついても知りました。 そのことに対する想いを形にしたのが『へばの』であり、『へばの』において、映画監督として消化し切れない部分を映画にしたのが、来週から公開する『息衝く』です。」
と、『へばの』から『息衝く』への制作の経緯を説明。

そして、主演のお二人に撮影当時を振り返ってもらいました。

西山さんは、
「撮影した時は20歳そこそこで、この映画の中にも登場する子供を「産む」ということ、そして、六ケ所村で産む、とはどういうことなのか、についての実感がありませんでした。2009年に公開となり、その後、2011年に震災が起きた5月に、渋谷でリバイバル上映があり「映画を観て意見交換する上映会」などがあって、自分自身が京都から東京へ移り住んで、徐々に『へばの』の世界がリアルになった、という感じです。」
「撮影当時は本当に寒くて(撮影は下北半島の海岸沿いにて行われました)、裸足のシーンを撮るために長靴を裸足で履いていたので、そのシーンの撮影後は足の指が動かなくなってしまい、3週間程お風呂の中で揉んでいました。」
と、ご自身における『へばの』という作品が持つ意味の変化、そして厳寒の東北での苦労を振り返ってくださいました。

続いて吉岡さんも、
「撮影当時の思い出は、木村監督の実家を拠点として映画を制作していたのですが、ご家族のみなさんに美味しい料理を作って頂いたり、監督のお父さんに大切にしていたウィスキーをご馳走になったりしました。ウィスキーの味は今でも忘れられません。撮影のことはあまり覚えていないです(笑)。」
と、心温まるエピソードと共に当時を振り返ってくださいました。

そして西山さんは、
「先程、撮影当時は『へばの』に自分が追い付けなかった、という話をしましたが、来週から公開される『息衝く』を試写で観た時もやはり同様の気持ちがしました。『へばの』は10年掛けて腑に落ちてきた、という感じだったので、『息衝く』もそうなってゆく予感がします。 また、木村監督は未来を予見しているようなところがあるので、今はちょっと怖いような気もしています。 友達に今日『へばの』のリバイバルがある、と言ったら、「2009年に『へばの』を観たけれど、今の世の中はあの映画から分岐したパラレルワールドみたい」と言われました。 今、自分は『息衝く』をまだ実感を持って把握していないけれど、それができた時には「ものすごい忘れ物をしてしまったのではないか」と思うような気がしています。」
と、木村作品と現実の世の中のシンクロニシティについても語ってくださいました。

その後、役者としての10年を振り返って頂き、お二人が作品で主演を務めたこともある堀禎一監督(昨年7月に西山真来さん主演の『夏のむすめたち~ひめごと~』公開中にご逝去)についても話が及びました。

木村監督のデビュー作ということもあり、当時の技術面での苦労話も飛び出して、和やかなトークとなりました。

ご来場頂いたお客様に改めて御礼申し上げます。
ありがとうございました。

来週から公開される『息衝く』は、『へばの』の主人公である娘の紀美と父の大樹を六ヶ所村に残し、25年間を過ごしてきた息子の則夫と母の悦子が、様々な人間と出逢ってきた物語を描きます。
ぜひ、『息衝く』をご覧頂ければと思います。

【今後の上映スケジュール】
■2月19(月)『なしくずしの志』※上映後、監督舞台挨拶
■2月20(火)『へばの』
■2月21(水)『愛のゆくえ(仮)』※上映後、監督舞台挨拶
■2月22(木)『へばの』※上映後、監督舞台挨拶
■2月23(金)『愛のゆくえ(仮)』
(20日~22日も監督来場予定)
■料金:1,300円均一 ※リピーター割引実施!半券提示で1,000円
■場所:ポレポレ東中野(https://www.mmjp.or.jp/pole2/)

【23日(金)19時~公開前夜祭イベント】
映画『息衝く』前夜祭イベント「“正しさ”とは何か―息衝くわたしたちの運動」
■場所:渋谷LOFT9
■出演:
鈴木邦男(政治活動家)
宮台真司(社会学者)
杉田俊介(批評家・『息衝く』脚本)
木村文洋(『息衝く』監督)
■ライブ:北村早樹子(ミュージシャン、『息衝く』音楽)
■チケット:Peatix(https://peatix.com/event/344530)

ふるってご参加ください。